2012/10/17

何でも、全自動が良いとは限らない!

はてさて、ツール(ドリルの切削用刃)が異常停止して
ABS樹脂にブッ刺さる、、、

2回ならまだしも、3回目ともなると
これはもう、
機械の問題や、偶然ではありませんから
本気で原因を探さねばなりません。

幸い、PC制御のCAMマシンソフトでは
たいてい、切削し終わった最終予想形状が
表示されます。

そこで、データに問題がないか
モニターに目をこすりつけるぐらい
よ~く、チェックすると
必ず異常停止する箇所のデータ形状がどうもおかしい、、、

3DCGソフトで、モデリングした最終データ形状と
違うのに気付きました。
円柱のABS樹脂を削りますので、
切削が進んだときに、切削モデル自体が落ちないように
モデルデータの両端に支えになるような丸棒を
1cmほど付け加えているのですが
それが丸ではなく、三角になってる!

???
ということは、中心軸がずれているために
丸棒にならず、三角柱と認識され、
急激に深く掘り込む結果となり
過負荷がかかって異常停止したのです。

つまり、私がモデリングした形状データの
中心を、CAMのドライバソフトが勝手に
変更していたということが、判明しました。

念のため、メーカーにこのソフトの設計仕様を
問い合わせると、
”誰でも簡単に切削できるようにと
全自動で、バカチョン式にしました~!
ユーザーが手動で中心軸を調整する手間を省くことで
初心者の主婦の方でも簡単にお使いいただけま~す!”
てな感じ、、、

おいおい、それはアカンやろ!

皆さんにわかりやすく言うと、
今回、ハイヒールの冶具を作るために
ホットスタッフの足首から下の形状をCGで
モデリングしたわけです。

通常、人間の足というのは、
足首は足の後部(踵)に偏っていますね。
足のど真ん中に足首があれば化けモノですわ。

したがって、支えにするための丸棒は
当然足首の中芯部に追加しないとダメだから
結果的に
中心軸をこの足首のど真ん中に配置することになります。
まあ、いいかえると、足全体で言えば踵付近、いわば
中心軸が後ろに偏るわけですね。

ですから、円柱のABS樹脂材料を削るときは
設計段階では、足首がこの円柱材料の中心軸に来るように
わざとずらして、配置したわけです。

ところが、このCAMドライバ君は
バカチョン式に全自動化されてるものだから、
なんでも、かんでも、モデルデータ全体の中心を
材料の中心軸に配置してしまうのです。
いいかえると、足のど真ん中に足首がある感じに
なったわけです。

このために、何も無い部分を
中心点に向かって、深さがゼロの地点に
到達するまで深く掘ろうとしたわけです。
CAM切削機は正直だから、ソフトの指示通りに
ドリルを突き刺しただけだったんですね、、、

まあ、原因がわかり
設定を修正したので以後、異常停止することは
なくなりました。

それにしても、全自動で動くように設定された
機械は、非常に便利なのですが、
ちょっと、突っ込んだことをしたい
細かい調整をしたいというときには
時として不便なこともあります。

おなじことは、ミシンでも言えます。
私は、試作用にブラザーのイノビスD300という
自動糸調子つきのコンピュータ刺繍ミシンを使いますが
レザーの超薄素材など、特殊な場合は
糸の調整に苦労します。

自動糸調子のミシンは、早い話、手動で調整できません!
工業用のミシンは、専門の保守係りがいますから
原則自動糸調子なんかありません。
あらゆる素材に対応するためには、当然でしょう。

そこで、今回、試作用にジューキのオーバーミシンとして
有名なベビーロックを検討したときは、
自動糸調子の”糸取り物語”か、手動糸調子の”衣縫人”か
決めるときに、迷わず”衣縫人”を選びました。

オーバーミシンでは、糸が4本になります。
本縫いのイノビスでは糸は上糸と下糸の2本だけなので
何とかなりますが、
4本も糸を使うとなると、絶対に無理。
案の定、特殊な素材のときに、糸調子が合わず、
自分で、4本の糸を調整したらうまくいきました。
これも、自動機を購入していたらアウトだったでしょう。

そうそう、車でもそうですね。
普段は、オートマで渋滞など楽なんですが
いざ、急加速したいときなどは、
マニュアル車でスカッと自分の思い通りに
チェンジできるほうが、良いときがある、、、

まあ、全自動というのは、全てに良いわけではないと
知らされた、冶具作りでした、、、トホホ